【鎌倉・坂ノ下】夏と秋を彩る伝統の祭り|石上神社例祭・御霊神社例大祭

鎌倉の中でも、江ノ電が路地をかすめるように走る坂ノ下エリアは、観光地というより“暮らしのあるまち”として知られています。その坂ノ下で、古くから今も変わらず守られている二つの大切な神事があります。それが「石上神社例祭」と「御霊神社例大祭(面掛行列)」です。

単なる観光イベントではない、地元の暮らしと心に根ざした伝統。この記事では、それぞれの祭りの起源や内容、見どころなどを詳しくご紹介します。


目次

石上神社例祭と御霊神社例大祭の魅力に迫る

1.石上神社例祭(御供流し) 夏を迎える“海の神事”

開催日程:2025年7月19日〜21日(海の日前後)
見どころ:7月21日に行われる“海上渡御”

海と共に生きてきたまちの祈り

 石上神社の例祭の最終日、7月21日に行われる「御供流し」は、まさに坂ノ下ならではの海の神事。御霊神社を出発した神輿は、狭い路地を経て坂ノ下海岸に到着します。そこで神輿は、漁船に慎重に載せられ、海上渡御が始まります。

注目すべきは、その神輿に付き添って、地元の若者たちが“泳ぎ手”として海に飛び込み、神輿の漁船と一緒に泳ぎながら沖まで進んでいく場面です。目的地は、江ノ島が遠くに望める沖合まで。泳ぎ手たちは、神輿を見守るかのように円を描いて進み、御供(赤飯や紙飾り)を丁寧に海へ流します。

この一連の光景は、海と人との結びつきの強さを象徴しています。ただ船に乗せて終わるのではなく、人が直接海に入り、自らの身体を使って神に祈りを届けるという、まさに原始的かつ神聖な儀式なのです。

地元に受け継がれる役割と誇り

 昔から「この行事が終わらなければ、海開きはできない」とまで言われていた石上神社の例祭は、地域住民にとって特別な意味を持ちます。地元の若者が担ぐ神輿、伝統的な装束、奉納される神楽や祝詞。これらすべてが、地域の記憶をつなぐ“生きた文化”として今に伝わっています。
 海と祭りが一体となるこの光景は、鎌倉の夏の風物詩として、写真家や観光客からも密かな人気を集めています。

2.御霊神社例大祭(面掛行列)|秋を彩る幻想的な神事

開催日程:2025年9月12日(金)〜18日(木)
メインイベント:9月18日午後開催「面掛行列」

●神仏習合の歴史が生んだ“お面の行列”

御霊神社は、平安時代の武将・鎌倉権五郎景政を祀る神社で、古くから坂ノ下・長谷地域の守護神とされています。この神社の例大祭で毎年9月18日に行われる「面掛行列」は、県指定の無形民俗文化財でもあり、そのユニークさは他に類を見ません。
 
 行列では、「爺」「鬼」「鼻長」「翁」「烏天狗」「おかめ」など、ユーモラスで象徴的な10種類のお面をかぶった人物が神輿とともに町を練り歩きます。中でも妊婦の姿をした「おかめ」は腹に詰め物をして滑稽に演ずます。その腹に触れると「安産祈願」となる。

この面掛行列の起源は、実は必ずしも明らかでなく、多くの謎を孕んでいます。奈良時代の「伎楽」(仮面舞踏)に遡るも、源頼朝公に由来ともといわれ、神と人との間を仮面でつなぐ古代の信仰形態を今に伝えています。

厳かさとユーモアが共存する

 面掛行列の魅力は、その滑稽さと厳粛さが絶妙に同居しているところにあります。一見ユーモラスな仮面姿ですが、そのひとつひとつに深い意味が込められており、列の進行も極めて厳粛に行われます。

また、この行列は観光的な演出や屋台などはなく、純粋な神事として粛々と実施される点でも貴重な文化体験といえるでしょう。参加者は地域の長老から子どもまで幅広く、地域全体で祭りを支えている姿も感動的です。

アクセスと注意点

  • 最寄駅:江ノ電「長谷駅」から徒歩約5分
  • 注意事項:両祭りとも路地が狭く、特に面掛行列は雨天中止の可能性あり。事前確認をおすすめします。

まとめ・暮らしの中にある“神事”を体感しよう

 観光地・鎌倉の中でも、坂ノ下エリアはどこか懐かしく、落ち着いた雰囲気が漂う場所です。そんな土地で何百年と続いてきたこれらの祭りは、地域に息づく祈りの文化そのもの。見学するだけでなく、その意味や背景を知ることで、より一層深く味わうことができます。

鎌倉を訪れるなら、ぜひこの季節、この地域でしか出会えない“神と人の交わり”を体験してみてください。

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